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グダグダで超不定期更新。 ケータイからだと見にくいのであしからず。
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最近の二度寝は電車の中
富沢です。

とりあえず最近は原稿描きつつ、いつか完成させたい話の大筋を考えてます。

文才なくて続かないからあんまり意味ないんだけどね('A`)

まぁ、厨のかほりがプンプンする妄想が大好きなんでとりあえず。

0話:星がないこの街で

1話:賢者達の礎・理の都

2話:悠久の地

3話:黄昏時に影は舞う

4話:呼ばれざる来訪者

5話:罪無き者の罪深き軛

6話:甘き死

7話:光の溢れる場所

8話:禁忌なる終末の始動

9話:戦乱の渦の中で涙し、それでも歌い続けたその名

最終話:病める時も健やかなる時も死が二人を別つまで






ヽ('A`)ノ



うーん、ぼちぼちやって行こうかなぁ。
ごちゃごちゃしてた話がやっと自分の中でまとまった様なので。

内容としては現実とファンタジーが交差する話。
…最近このテの多いから拒食症気味ではあるのよね。
最近の読んだことないけど←
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白のキセキ

序章
崩れ行く日常・実在する非日常

-来訪者-
俺は夕暮れの廊下を歩いていてふと、誰かに呼ばれた気がして振り向いた。
しかしそこには人影はなく、オレンジ色の廊下にどこから迷い込んだか一匹の蝶がひらひらと出口を求め舞っていた。
そのままにするのも可哀想だと近くの窓を開け蝶を逃がす、ハズだった。

ずぶりっ

左の胸に違和感を覚えたのは喉の奥から生暖かい液体が込み上げ、口腔内が血の味で満たされた頃だった。
急速に身体が冷たくなるように感じ、心臓にかつてないほどの痛みが走る。
見れば胸からは西洋の剣のような刃が20センチ程飛び出していて、初めて自分が置かれた状況がとんでもない事と悟る。
しかし悟った時点で途方もない絶望とパニックに襲われた。
止めどなく流れ出る血液、間近に迫る死の存在により思考回路は急速に機能を停止しつつある。

「いきなりで悪いな、ガキ。説明はお前が生きてる間には無理だ、ただ不幸だったと思え」

背後から声が聞こえ、反射的に振り向こうとした瞬間に右胸も剣により貫かれる。

「動くと苦しいって、寝てな」

おそらく声の持ち主であろう者により背中を蹴飛ばされ廊下に倒れ込む。
それと同時に胸から2本の剣が抜け、傷口から大量の血が噴き出す。

「しかしこんな無名の世界に未覚醒の壊葬者(フラグレント)がいたとはな、魔聖の爺も見落とす訳か」

ぼそりと呟く。
男が何を言っているのか理解出来ない。第一理解出来るような状態ではない。

どうにかして助かる方法は―

考えようとしたが脳に酸素が行かない為に思考出来ない上、肺にも酸素が行かず苦しくてたまらない。
どのみちこの出血で逃げるのは不可能であり、廊下には人はいないので助けは来ない。
来たとして助かる保証などないのだが。
カツカツと後方より男のものであろう足音が近寄ってくる。

あぁ、もう駄目だ。

本能的に思った。
しかし今にも途絶えそうな意識の中、先程の声が聞こえた。
空耳かと思ったあの声が。
遠くから微かに、しかしはっきりと。

「―・・・・・・、‐‐・・・」

自分で何を言ったのかわからない。
その声に対して救いを求めたのか、それとも断末魔の唸りか。

「あ?何か言ったか?」

男が頭を踏みつける。
ミシミシと頭蓋骨が軋み、その音がダイレクトに鼓膜に伝わる。

「あー・・・面倒なる前にそろそろ」

剣先が首の真ん中に宛がわれ、押し込まれる。

ミシッ

バギャッ

「ぬがぁあっ?!」

男の叫びと共に首にあった剣の感触がなくなる。
同時に身体の痛み・息苦しさ・寒気がなくなり、朦朧していた意識が回復する。

「よかった、間に合って・・・」

安堵した少女の声が、先程の声が言った。
一体何が起こったのかわからない。
しかし不思議な事に全く動かなかった手足が自由に動くようになった。
とりあえず身体を起こし自分の胸を確かめる。
シャツは血でかなり汚れているものの、触っても穴もなければ痛みも感じない。
回りを見渡せば、いつの間に現れたのか隣に自分の肩くらいの小柄な少女が。
そして10メートル程先には自分を殺しかけたであろう男が倒れていた。
少女は真剣な面持ちで

「訳は後で話します、だから今は―」

と言いかけた刹那。

ガインッ

激しく金属がぶつかる音。
倒れていた男がいつの間にか少女に急接近し剣を彼女に向かって降り下ろす、
が、少女は手に持っていた杖のようなもので受け止めていた。

「いきなり顔面蹴りつけるたぁひでぇじゃねぇかミルエタァ!!」

男が叫ぶ。
鼻からはだらだらと鮮血が滴っていた。

「貴方こそ上からの許可も得ず独断での空間移動に殺生とは何事ですっ!」

男がもう片方の剣で脇腹を斬りつけようとしたのを少女は察し、右足で男の鳩尾を蹴り飛ばす。

「ゲフッガフッ・・・うるせぇ、秩序の犬が!そのガキは未覚醒の壊葬者だ。
己では覚醒しなくとも誰かがそいつを利用して他の空間に影響を与えないとも限らないだろう!」

「だからといって殺す必要が何処にありますかっ!グロック、貴方を束縛し報告書付きで協会(イトア)に突き出します。」
グロックと呼ばれた男は舌打ちすると少女目掛けて突進する。
しかし少女は逃げる素振りを見せず、なにやら杖の先を地面カリカリと擦り付ける。
すると杖が通った軌跡が発光し、それを中心に複雑な記号や文字が浮かび上がる。
いわゆる魔方陣というものだろうか。

「空間変換・作動」

少女がそう言った直後に円の全体が光り出し、彼女は素早く後退する。
しかしグロックには見えていないのかそのまま直進している。
グロックが魔方陣に足を踏み入れた瞬間、彼の身体はビデオの一時停止のようにぴたりと動かなくなり足から消えていく。
どんなトリックなのかはわからないがおそらく危機は終わるのだろうと彼女の顔から察した。

だが、グロックは笑っていた。

「はっ・・・転移魔方陣か」

「・・・わかっていたのですか。しかしわかったところで貴方は」

「だから良いんじゃないか、てめぇを置いて帰られるからな・・・手柄は惜しいが」

それを聞いて少女は何かを悟ったのか表情が変わる。

「いくらお前でもこの転移石がなけりゃこっちには帰ってこれないだろう?
どうせ不殺生主義なお前なんかたいした束縛式転移魔方陣なんか組んでないだろうからありがたく利用させて頂くぜ」

グロックの手にはいつの間にかキラキラと輝く宝石のようなものが握られていた。

「っ・・・いつの間に!」

「なぁに、さっき蹴り飛ばされた時に引きちぎったんだが気付かなかったか?ま、精々そっちの世界で余生を楽しむんだな」

少女がグロックの手から石を取り返そうとした瞬間に、彼はヒュンッと音を立て魔方陣ごと消え、少女は勢い余って転んでしまう。

「なんて事・・・これじゃあ私が咎人として処分されて・・・それどころか一生この世界に・・・!」

絶望したような表情で呟きながら宙を見つめその場にへたりこむ少女。
俺はどう声をかければ良いのか分からずにただ立ち呆けていた。
しかししばらくしてはっとしたように立ち上がりジンに歩み寄る。
そして深々と頭を下げ

「ごめんなさいっ、突然こんな事に巻き込んでしまって!訳はしっかり話すので今はどうか怒らずに!」

余りに必死に謝る姿に困惑した。
確かに九割方殺されかけて「平気です」なんて言う人間はいない。
しかし殺しかけたのはグロックとかいう男で、彼女に向かって怒るのは筋違いだ。
しかもあの男から救ってくれたのは彼女であり、理解は出来ないが傷が消えたのは彼女のお陰であろう。

「えっと、そんなに謝らないで・・・助けてくれてありがとう。」

そう言うと少女は頭を上げ、真っ直ぐな瞳でジンを見つめた。

「いえ、世界を維持するイトアの者として貴方に危害を加えてしまった事は本当に・・・」

「は、はぁ」

話が理解出来ない為にかなり困惑気味なのを察したのか、少女は慌てて何か言おうとしている。
さっきまでの真面目な表情とはうってかわって小動物のようにアワアワしている
彼女がやけに可愛く見えた。

「えと、とりあえず一から説明しないといけませんね。」

少女が指をパチンッと鳴らすと、シャツや廊下にべっとりついた血が綺麗に消えた。

「・・・まさか魔法使いじゃないだろうな」

先程からの芸当の数々からしてそんな事が出来るのは魔法使いぐらいではないか。
勿論、科学が発展したこの現代社会で魔法などという非科学的なものなど一般人は信じてはいない。
それは自分も同じであるが、こうまで見せつけられてしまうと魔法だと思わざるを得ない。

「魔法使い・・・まぁ、その表現は半分当たりですね。厳密に言えばそれだけではありませんが・・・
あ、自己紹介がまだでした。
私の名前はアリス、アリス・フォウナ・クライン。アリスって呼んでください。
因みに先程の男がミルエタと呼びましたがあれは私の世界で"白髪頭"という差別用語です。
ご覧の通り真っ白ですがこれは生まれつきなんですよ・・・」

アリスは左手で自分の長い髪を撫でながら言った、どこか寂しそうな表情で。

「あぁ・・・わかった。俺は狼谷ジン、適当に呼んでくれてかまわない。
とりあえず場所を変えて話そう。学校で部外者といるのも具合が悪い」

と言ってアリスを連れてその場を後にしたものの、まず困ったのはアリスの服装だった。
どこぞのアニメか漫画のコスプレのような衣装で、一緒にいて学校や近所で人目についたらすぐに噂になるだろう。
そんな面倒な事態どうしても避けたく、細心の注意を払い校内を出た。
次の問題は何処で話すべきか。
学校内の施設は探せば人がいない所はあるのだが、もうすぐ閉鎖されてしまう。
かといってその格好で喫茶店は無茶である。
だとしたら彼女の家か自宅なのだが、彼女に聞いた所「この世界では帰る場所がない」らしい。
仕方なく自宅に連れて行くしか選択肢はなくなったのだが、どうも異性を招くと
言うのは気が引けた。
ある人間に発覚するととても面倒な事態に発展する恐れがあるからであり・・・


その後なるべく人がいない道を選び、何とか誰にも見られずに自宅へとたどり着いた。

「ジンさん、なんでこのような面倒な道を?」

全くもって不思議だ、というような顔でアリスは尋ねる。

「何でって・・・そりゃアリスさんがそんな格好をして一緒に歩けば色々と不具合が・・・」


「私、今はジンさんにしか見えないようになっていますが・・・」

しばらくの沈黙。

「・・・魔法ですか」

「えぇ、魔法です」

頭を抱えて玄関に座り込む。

「他人から見たら・・・一人で不自然な事してたって事か」

「まぁ、おそらくは・・・」

長い沈黙。

「あ、う・・・ごめんなさい、先に言えば良かったですね」

「・・・大丈夫だよ」

あまりに色々あって頭が回らない。
まばパニックは終わってないのかも知れないのだろう。
とにかく今は何も考えず、この件については忘れる事にした。
アリスを居間に上げリビングに通しソファーに座らせると、冷蔵庫からコーラのボトルを取り出しグラスに注いで差し出す。
異世界人である彼女はコーラを飲めるのかと疑問に思ったが注いでしまったのでそのまま渡した。

「それでは・・・えっと、どこから話しましょうか」

アリスはそう言うとコーラを不思議そうに見つめ匂いを少し嗅ぎ、一口含む。
少し驚いたような表情をしたが再び口をつけグラスを置く。

「・・・やはり私の存在でしょうか」

無言で頷く。

「では、私の名前は先程の通りアリス・フォウナ・クラインと言います。
私の職業は魔導師であり、魔術の研究に打ち込み自らを高めると共に、
もといた世界・アヴァンヘイルに存在するイトアと呼ばれる魔術士協会にてアヴァンヘイルの統治、
ジンさんがいるこの世界など他にある無数の世界の観測・記録、必要な場合により保護を行っています。」

アリスはまたコーラに口をつけて小さく「けぷ」と漏らした。

「では私がいた世界アヴァンヘイルとは何なのかというと正式な名前は四柱世界アヴァンヘイルといい、
4つの一際大きな世界とほぼ直接的に繋がっています。
そしてその4つの世界ごとに小さな世界がいくつも繋がっています。
簡単に言えば木のようでしょうか、と言っても世界ごとに"木"は異なるのですが・・・
とりあえずは大きな幹が一つあり、太めな枝が四つあり、そこから細かくいくつも出ている細かい枝の先に葉があるのです。
更に数ある世界は目に見えない管で繋がっています、蜘蛛が張った葉から葉へかかる糸のように。
その枝や糸、つまりゲートを通って私達限られた魔術士が世界から世界へ移動、
又は召喚として自分がいる世界に他の世界から生物やら物体やらを引っ張っていく事が出来るのです。」

説明が一段落した所でコーラ飲もうとしてグラスを手に取るが中身がない事に気が付く。
その表情から余程気に入ったらしい。
それに気が付きボトルからコーラを足すと、小さく頭を下げごくごく飲み干す。

「あ、そんなに勢い良く飲んだら・・・」

「!!・・・くぅっ・・・・・・げふっ」

飲み干してからビリビリと小さく震えた後、先程より大きく二酸化炭素を漏らした。
目をかなり潤ませながらも遠慮がちにグラスを差し出しオカワリをねだった。
笑いを堪えつつコーラを注ぐ。

「この世界にはこんなにも不思議で美味しい飲み物があったのですね~」

目を輝かして(潤まして?)真剣に感動する姿につい吹き出してしまった。
コーラのような世界的にポピュラーな飲み物を飲んでここまで感動する姿は、
にわかには信じられない小難しい話で異世界から来たと説明されるより余程分かりやすく信じられるのではないか。

「とりあえず説明は理解出来たが・・・今は信じるか信じまいか悩んでいる。
この世界での常識で考えれば今の話は夢物語だ。
もしかしたらさっきから今も貴女を含む数名の人間に騙されているとすら考えられる。
あの胸を貫かれた痛みすら催眠術か幻覚によるものかも知れない。
でも俺はそんな話を狂っていると思いながらアリスさんは信じられるという根拠のない確信がどこかにあるんだ」

それを聞くとアリスは優しく微笑み言う。

「信じる信じないはジンさんの自由です。でも今まで起こった事は全て事実です、この私が存在する限りは。
これから共に生活する間に信じるか信じないかを決めても遅くないと思います」

「ああ、そうだな」と言い終わってから硬直する。

「・・・・・・ん、何、今何と?」

アリスは不思議そうに頭を傾ける。

「え?一緒に生活する間に信じるか信じないかを決めても遅くないと・・・」

俺は聞き間違えと自分に思いきかせてもう一度聞いたがそれでもそうとしか聞こえない事に唖然とした。

「さっきの男との会話で聞きませんでしたか?

実はこの世界はかなり稀な存在で先程説明した繋がりがかなり不安定なんです。
樹系図での枝では繋がっておらず、全て糸であちこちと繋がっているのです。
しかしそのゲートは開いたり閉じたりと変則的で、空間移動にはその管を一時的に拡張する石がないと出来ないのです。
しかし石は送還したあの男に奪われてしまい、あの男にしたように強制送還の場合、自分は対象に出来ず、
また召喚術でアヴァンヘイルから救助を喚ぶことも枝の繋がりがないので不可能なので今は帰る手段がないのです。
それで帰る手段が見つかるまで申し訳ないですがジンさんの家にお世話になるんですが・・・
言いましたよね?この世界に帰る場所はないと・・・
それを聞いてジンさんは自分の家に連れて来たのかなぁと思ったんですが」

正直、彼女を泊める事は考えてもなかった。
大分頭の整理が出来て冷静になって改めて考えればなんとも当たり前な問題だっ
たのだが。

「・・・この世界に知り合いは?」

「ジンさんだけです」

予想通りの悲しい答えが帰ってきた。
確かに身寄りのない彼女をこの期に及んで家から追い出すのは酷だ。
しかし、独り暮らしの高校生の家に自分と同じくらいの少女と暮らすのは世間的
には不健全ではないだろうか。

「あの・・・駄目でしょうか?」

不安そうな顔で覗き込んでくる。ちゃっかり両手を握りながら。

「い・・・あ・・・駄目じゃない・・・駄目じゃないが・・・」

「駄目じゃないけど?」

「・・・アリスさんは問題ないのか?」

と言って後悔する。

「ええ、私には行き場がありません。それにジンさんは悪い人じゃないから安心です!」

目を輝かし満面の笑みで喜ぶアリス。

天真爛漫・天衣無縫・純粋無垢という言葉はこの為にあるんじゃないかと思うくらいにとても美しい笑顔だ。
しかし事実上もはや了解してしまった。もはや笑うしかない。

「じゃあちょっと汗かいてしまったので身体を洗いたいのですが・・・」

余りの切り替えの早さと若干不安になる。

「・・・あぁ、だったらこっちだ」

キッチンにある給湯のスイッチを入れ風呂場に彼女を連れて行く。

「・・・着替えはどうする?」

「・・・ありゃー、ありませんねぇ」

呑気な顔で答えるのに対して「あぁ、こいつは天然だ」と心の中で嘆く。

「・・・・・・仕方ない、とりあえずシャワー浴びといてくれ」

「わかりましたー」

脱衣場から出るとケータイ電話を取り出し通話履歴を出す。
全通話履歴の上から三番目に麻生麻衣と表示されているのでそれに電話をかける。

truuuuu.....

truuuuu.....

truuuuヴッ

『もしもし、どしたー?』

「麻衣よ、一生のお願いというものを使っても良いか?」

『珍しいね~、確かにジンからお願いされた事は一回もなかったよねぇ~どっかの馬鹿と違って』


「・・・いいか、今遠い親戚の知り合いの外国人が俺の家でしばらく預かる事になったんだが」

『えぇ!?ホント!?ねぇ見に行ってもいい?』
「パンダじゃないんだから・・・てか人の話は最後まで聞け。
だがな、彼女は衣類が入った鞄を空港で盗まれたんで着る服がないんだ。
悪いが家に来る前に適当に服と下着を買ってきてくれないか?」

『彼女って女性だったの?!キャー不健全だー!!』

「・・・・・・麻衣」

『はいはい、わかったわよ、でもお金払ってよ?』

「あぁ、ついでにな」

『ん?』

「・・・この事は誰にも言わないでくれ」

『・・・ぶっ、はははははははははは!!なーに照れてんのよ!
ま、いつかバレるまで私からは誰にも言わないでいてあげる。じゃあね、あははははは!!』

ブツッ

ツーッ

ツーッ

ツーッ

「・・・あんにゃろう」

ケータイがミシミシと音を立てる程に握りしめる。
と、風呂場から「きゃあっ!!」と叫び声が聞こえた。
急いで脱衣場に駆けつけ大丈夫かっ?と問いかけた。
「ど、どどどうやったらお湯が出るのかとし、しばらく考えたんででですけどど、
わわ、分からないのでレ、レレバーをひねったらい、いいいいきなりうう上かられ、れれれれれ冷水がっ!」

おそらく昨日最後に冷水を使いそのままにしていたのだろう。

「右側にある白いハンドルないか?それのメモリを赤い方に回して数字の40の少し前あたりのところで止めてみて」

「は、はひ」

少ししてアリスの感心する声が聞こえたのでとりあえず安心する。

「しばらくしたら友人が服とかを買って来るんだが、
アリスさんの事を外国人と言っておいたんで変な事聞かれても適当に相づちを打つか俺が言う事にうんと言ってくれ、
くれぐれも異世界から来たとは言わないように。」

「あー、ありがとうございます。でもいざとなったら一時的な記憶操作で都合の悪い事は消せるので大丈夫ですよー?」

「・・・そうならないように頑張りましょう」

万が一麻衣に何かあったらそれこそ大問題だ。
その後シャンプーとリンスの使い方を簡単に説明してからリビングに戻った。
一人になり、どっと精神的な疲れに襲われる。
しかし休もうとソファーに横たわるが、何故か身体はあの傷が回復した時からずっと調子が良い。
それに動かずにじっとしていると色々と考えてしまい休むに休めないのだ。

「料理でもしようかなぁ・・・」

ソファーから起き上がりキッチンへ移る。
冷蔵庫を開けると彼の性格が分かるように綺麗に整理されている。
そこから豆腐とひき肉と豆板醤・甜麺醤を取り出し、下の段から長ネギを出す。

「はて、口に合うかねぇ・・・麻婆豆腐は」

次々とまな板の上でカットされるネギと豆腐。
鶏ガラスープとすりおろしたニンニク、その他調味料をお湯で溶き別の容器には水溶き片栗粉を用意する。
中華鍋を加熱しまんべんなく油を馴染ませたらひき肉とネギを炒め、火が通ったら豆腐とスープを入れて更に加熱する。
大体豆腐が加熱されたら後は水溶き片栗粉でとろみをつけて完成だ。
その時丁度風呂場からアリスがジンを呼ぶ声がする。
火を止めて風呂場に向かう。
ドアの前に立つとアリスが脱衣場にいる事が分かる。

「開けちゃ駄目ですよー?」

おどけた声でアリスが茶化す。

「当たり前だ」

「むー。あ、ところで服の方は?」

「まだ来てないけどそろそろ来るんじゃないかなぁ」

しかし女性の服の買い物は長い。
皆が皆そうだとは限らないが、少なくとも麻衣は長い。
いわゆる腐れ縁で、何回か買い物に付き合わされた事があったがいつもいつもひたすら待たされた事しか覚えてない。



「ジンー!買ってきたぞー!可愛い娘見せれー!!」

噂すればなんとやら、勝手に玄関から入って来てずかずかと家に入って来る彼女。

「いつもよか大分早くないか?」

「外国人に着せたい服を前々から考えてたからね!」

「・・・まぁ、いつもそうして貰うと俺もヤツも助かるんだが」

はいはいと生返事をして麻衣は脱衣場の前までやって来る。

「名前は?日本語喋れる?」

「名前はアリス、日本語は日本人とかわらん」

彼女は安心したようにドアをノックする。

「こんばんはーアリスさん、ジンの友人の麻衣って言うねー。よろしく」

「あ、こんばんは~。よろしくです」

小声で「ぅぉ」と言うとドアを自分が入れるギリギリのところまで開けて入って行く。

ジンは一人残されて居づらくなり、料理を再開する為キッチンに戻ろうと踵を返す。
後ろから「きゃーでっかーい!」と聞こえてたりするのは無視しつつ。



「大きい、ですか?」

「うむ、私も結構自信あったんだけどねぇ・・やっぱり外国人だけの事はある!」

妙に興奮気味の麻衣さんは羨ましそうに私の胸を凝視している。

「あ、ごめんごめん。こっちが先だったね」

と言いつつ持ってきたものを取り出す麻衣。
こっちが先とはそれ以外に何があるのだろうか?

「これは・・・?」

アヴァンヘイルにも下着はあるのだが服の胸元だけを切り取った乳房にフィットする不思議な下着は存在しない。
軽鎧では見たことがあるが。

「しかしブラジャーを知らないとは随分珍しい人ねぇ・・・まさか大きい理由はノーブラなのか?」

と言いつつ"ぶらじゃあ"たる物を着けてくれた。
今まで着けた事がないので少しキツく感じる。

「ふむ、ちょいと大きめなのを買ってきたけど丁度良いみたいね。んでもって、ほい」

次に取り出したのは硬めの生地で出来たコバルトブルーのズボンに、薄い布で出来ている白地に黒で模様が描かれた長袖の服。
ジンさんも麻衣さんも似たような服装をしているという事はこの世界では一般的な衣類なのだろう。

「まぁ、お風呂上がりにあんまりオシャレする事もないしこんなところかね」

「あ、ありがとうございます」

「まま、気になさんな」

麻衣さんはそう言うと他にも衣類が入っている袋を渡してこの部屋から出ていく。

「さて、夕食の用意も出来たらしいしご馳走になるかね。あいつの作る料理おいしいのよねぇ~」

と言いながら私の手をひいて。

内心、私は不安で仕方なかった。
あの時転移石を奪われ、空間の繋がりが不安定過ぎるこの世界に取り残されてアヴァンヘイルに帰る方法なんて見つかるのかるのかすら分からない。
もしかしたらグロッグの言った通りに生涯この世界で過ごす事になりかねない。
でも、何故か同時に"きっとどうにかなる"という安心感もある。
それはきっとジンさんが私を信じられる"根拠のない確信"と同じものなのかもしれない。
だから私も信じようと思う、存在するかもしれない可能性と未来を。

ピンポーン

ジンさん達がいる部屋に行く途中、チャイムが鳴り玄関の扉が開く。
そして入ってきた黒髪の少女と目が合う。

そして―
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富沢トモミ
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絵描き ネトゲー 料理 etc...
自己紹介:
イチゴ牛乳と杏仁豆腐とチョコレートケーキが大好物の東北人。
マビノギではタル鯖で「銀月花」というキャラで、主に午後10時ごろ出没。
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